著者の南場智子氏は元マッキンゼー、DeNA創業者ということで有名な方だと思うが、著書は今のところ本書のみである。
 

よく作家の作品は処女作が最も優れていると言われるが、本書もまさにその通りではないかと思う。
これを超える作品は10年後、20年後、あるいはもう生まれてこないかもしれない。
 
マッキンゼーのパートナー(コンサル業界では最上位級の階級)として活躍していた南場氏が、30代後半で突如熱病(本人曰く)にかかり、DeNAを創業。
まず、マッキンゼーでは順風満帆のキャリアであったのだろうと思っていたのだが、そうではなかった。
最初の数年で全く芽が出ず、転職を考えていたのだ。
 

結局私はこの職業に向かないのだ、そう悟った私は、今度こそ観念して転職活動を開始した。

 
だがこの直後に配属されたプロジェクトで大活躍し、コンサルティングにハマったのだ。
 

ひとつの職業で曲がりなりにも通用する人材になれたことが一定の自信となり…
あのときあのまま辞めていたら、もしかしたらどこへ行っても「ここでもダメなんじゃないか」とすぐに諦めてしまい、次から次へと転職を繰り返すジョブ・ホッパーになっていたかもしれない。
本当に、紙一重なんだなぁと思う。

 

本当にその通りだと思う。会社に入ってすぐ辞めてしまう社員がいるが、本人の意志は尊重するものの、懸念するのはジョブ・ホッパーになってしまうことだ。ある程度経験しないとその仕事が自分に合っているのか判断できない。また、どのような仕事でも、合っている部分と合っていない部分、両方あると思う。これだ!っという完全な天職ってあるのだろうか。
 
DeNA創業後のすったもんだ具合は本書を見ていただきたい。
・システムが完成するはずの日、実はソースコードが1行も書かれていなかった事件
・上場前の東証社長との面接の日に、階段を踏み外して頭を強打した事件
などなど。
 
一番面白かったのは、激やせラリーというダイエット競争の話だ。
南場氏がNo2の守安氏に対して「うざい」と書いている笑
下手な小説より面白い。
 
ちなみに、南場氏は「将来事業リーダーになりたいので、まずコンサルタントとして勉強する」という考え方に反対だ。
 

コンサルタントは言う人、手伝う人であり、事業リーダーはやる人だから、立場も求められる資質も極端に異なる

 
コンサルタントの方への忠告して以下を挙げている。
 

・自明なことを図にしない
・人の評価を語りながら酒を飲まない
・ミーティングに遅刻しない

 
特に人の評価をしてしまう癖があるように思える。自戒を込めて。
 
最後にこの言葉で締めくくろう。
 

それにしても、マッキンゼーのコンサルタントとして経営者にアドバイスしていた自分が、これほどすったもんだの苦労をするとは…。
経営とは、こんなにも不格好なものなのか。だけどそのぶん、おもしろい。最高に。

 
DeNAの小会社であるSHOWROOM社長、前田裕二氏の「人生の勝算」。こちらもオススメ↓