量子コンピュータについて学習している。
今まで関連する本を2冊読んだ。

暗号解読
量子コンピュータが本当にすごい

 

3冊目であるこの本で、いよいよわかってきた。
いや、量子の振る舞いについてはもやっとしている。量子コンピュータが量子の性質を利用し、どうやって計算しているのかはわかってきた。
 

本書の著者である西森教授は「量子アニーリング」を最初に提唱した量子コンピュータ理論の第一人者だ。
 

往々にして、大学教授や専門家というのは説明がヘタクソであるが、本書はそんなことはなかった。
数式は出てこないし、平易な表現と図解で、初心者にも非常にわかりやすかった。
 

量子コンピュータのしくみの説明は本書に譲る。
ただ、本書タイトルは『量子コンピュータの原理』などではない。量子コンピュータがAIやその他社会問題を解決するためにどう役立つのか?が主眼である。
 

組み合わせ最適化問題にしか使えないとなると「応用範囲が狭い」と思うかもしれないが、実際にはそうではない。現実の社会には、組合せ最適化問題が非常に多く存在する。

そうなんだ。。。てっきりごくごく限られたシーンでしか役に立たないコンピュータだと思っていた。
本書で紹介されている例だけでも、
・車の自動運転のルート最適化、交通渋滞の緩和
・船舶や飛行機のルート最適化による、物流の最適化
・医薬品の分子構造解析による、医薬品開発
・システムのバグ取りの最適化(ロッキード・マーティンはこの用途ために量子コンピュータを購入)
・投資のポートフォリオ最適化
などなど。そして極めつけは、AIへの適用だ。
 

ディープラーニングを行う上で必要となる「サンプリング」にもD-Waveの量子コンピュータが有用である...

これは強力。。。
 

ちなみに、量子力学については、以下の名言があるらしい。

「量子力学がわかったと思っているうちは、量子力学がわかっていない」

byファインマン
 

特に意味不明なのは、重ね合わせとトンネル効果だ。
ヤングの実験では、粒子が1粒しかないのになぜ重ね合わせが発生するのか。なぜエネルギーの低いほうにすり抜けることができるのか。
 

そのような現象が起こるとわりきって、その現象を計算にうまく利用するのが量子コンピュータということだ。
 

障壁となる壁をすり抜けるトンネル効果を起こすために、まずはいろんなアイデアを「重ね合わせ」るところから始めよう。

最後にうまいこと言って本書は締められている。